ブラジル訪問
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ご報告:ブラジル ベロ・オリゾンテ市を訪問して

報告 国際局担当

<はじめに>

 平成18年6月13日より10日間、管長猊下の命により豊田教会長杉崎法瑞先生はブラジル、ミナス・ジェラス州都ベロ・オリゾンテ市を訪問され、同市における宝塔読者宅において法要を厳修し現地の日系人の方々と法縁を深められました。今回のブラジル訪問の報告を以下にさせていただきます。

<ベロ・オリゾンテ市と大乗教>

<ブラジル第3の都市 ベロ・オリゾンテ市>

 サン・パウロ市やリオ・デ・ジャネイロ市、あるいは首都ブラジリアという名は耳にしたことはあっても、私たちにとってベロ・オリゾンテ(Belo Horizonte)市はなじみの薄い都市かもしれません。“美しい地平線”という名を持つベロ・オリゾンテ市は建設後約100年の新しい商業都市で、サン・パウロ市を擁するサン・パウロ州の隣、ミナス・ジェラス(Minas Gerais)州の州都であり、現在約280万人が住むブラジル第3の大都会であります。ミナス・ジェラス州の“ミナス(Minas)”は英語の“mine”、“ジェラス(Gerais)”は“general”の意とのこと。すなわち“あらゆる鉱物”を指し、名前の通り鉄鉱石やダイヤモンドといったあらゆる宝石のブラジル屈指の産出地であります。同州には1957年日伯合弁事業で建設されたウジミナス製鉄所があり、ベロ・オリゾンテ市においてもこの製鉄所関連の仕事でご活躍になった日系人の方がお暮らしのようです(ただサン・パウロ市の様に日系の方々が数多くお住まいというわけではなく、街を歩いても日系の方とすれ違うことはほとんどないそうです)。
 ベロ・オリゾンテ市は標高850メートル程の高原に出来た風光明媚な都市であり、地形はちょうど日本の長崎や小樽に似た坂の多い街でありました。気候も年間を通して15度から30度程度で、今回訪れた6月も現地の初冬とはいえ20度を下ることはなく、大変温暖でさわやかな気候の街です。

 ところで、教祖杉山辰子先生はご生前中にブラジル布教を志されたと教団では伝わっておりますが、前身の仏教感化救済会から現在までついぞ教団としてブラジルの地を訪問したことがありませんでした。実はこのベロ・オリゾンテ市に豊田教会所属のご信徒のご親戚が住んでおられ、過去20年近く「宝塔」や「大乗信報」をお送りさせて頂いてきましたが、法縁は出版物を通じた形に留まっていたのです。
 そんな折、昨年12月ご信徒のご親戚T様からベロ・オリゾンテ市におけるご一家のご様子や妙法への思いをしたためられた長文のお手紙が管長猊下に届き、現地の方々と直接お会いして法縁を結ばせて頂く機は熟したとの判断がなされ、豊田教会長杉崎法瑞先生の派遣が決定したのであります。以後、手紙や電子メールを通じて同市の宝塔読者の皆様と調整を重ね、この度のブラジル訪問が実現の運びとなりました。

<出会い>

 4時間以上も到着が遅れたにもかかわらず、ベロ・オリゾンテ、コンフィンス国際空港にはT様とお嬢様、同じくT様のご縁で宝塔読者になられたA様ご夫妻、T様のご親戚E様が私どもを温かい笑顔で出迎えてくださいました。考えてみれば若干の手紙のやり取りがあるだけで、皆様とは全くの初対面であります。それだけ大勢の方にお出迎えをして頂くなどとは予想だにせず、唯ただ恐縮を致しました。一人ひとりの方と握手を交わし、長旅をねぎらう言葉を頂いた時、私どもはこの旅が有意義なものとなることを直感致しました。
 車に分乗して、宿泊予定のホテルへ。ロビーのレストランで遅い昼食を皆さんと取りながら滞在中の予定をご相談しました。とりあえず日本出発前からご依頼を受けていた翌日(ちょうど6月15日はキリスト教の祝日でした)の先祖法要で回向させて頂く方々のお名前や施主様とのご関係を伺い、メモ帳に書き付けました。それぞれのお宅のご先祖やブラジル移住をなさってからの物故者のお名前を注意深く伺いながら、ご供養させて頂く方々の多さに驚きつつ、今回のブラジル訪問の意味をかみしめ気を引き締めました。
 皆さんが帰宅されてから、ホテルの部屋において、翌日の先祖法要に使う塔婆書きをしたり、お集まりになる約50名の方々にお渡しするべく、日本から予め送付してあった『大乗教教団史』、「大乗グラフ―インド大仏開眼特集号―」、教祖コミック『華の旅人』、「入信の手引」等の教団出版物や念珠等の記念品を袋詰め致しました。さらにホテルのビジネス・センターにて管長猊下のメッセージ教祖様ご略歴のポルトガル語訳を夜更けまでコピーし、翌日の法要に万全を期しました。

<6月15日 先祖法要>

<読経の様子>

 15日朝9時、日本から持参した一尊四菩薩の掛け軸本尊や三つ具足等の仏具、前日準備した記念の品々を大型のスーツケースに入れてA様の車に乗り込み、先祖法要の準備の為ホテルを出発しました。途中T様のご自宅に寄りT様も合流致しました。
 法要会場はT様のご親戚で同じベロ・オリゾンテ市内にお住まいのI様宅とのこと。日本から我どもが訪ねてくるというので、久方ぶりにご一族が集うとのことでした。ブラジルの国土は日本の23倍もあり、ミナス・ジェラス州だけでも日本全土の面積と同程度と言われます。従って先祖法要にお集まりになられた方々の中には、200キロ以上車を運転して来られた方や1000キロ以上も旅をして来られた方もお見えになりました。
 I様宅に到着した私どもは早速荷を解き、祭壇づくりを始めました。幸いA様がご自宅から仏壇をご持参され、大乗教の掛け軸本尊を納めることが出来ました。お宅の方に仏花と御供えの果物をご準備頂き、それらを飾り付け、導師席や伴僧の位置もすぐに決まって、心配していたよりもスムーズに会場の準備が進みました。その8畳ほどの応接間の片隅にちょうど講演台に最適な高さの台を見つけ、お宅の人に無理を言って物を片付けて頂き、法瑞先生の講演台として使わせて頂くことにしました。今年の春季大祭の折、管長猊下がブラジル行きの辞令と共に法瑞先生に手渡された教団伝統の“三本ロウソク(慈悲・誠・堪忍を表す)”の演台布を、その急ごしらえの演台に広げてみるとあたかも事前に計った様にサイズがぴったりと合い、法要の準備が完了しました。
 私どもは一旦法要会場を失礼し、A様の車でT様のお宅に向かいました。何でもT様のお宅でT様のお嬢様とA様の奥様が昼食を作って待っていて下さるとのこと。T様のご長男やお孫さん方も一緒に美味しい手料理に舌鼓を打ちながら、T様よりブラジル移住以来の様々なご苦労話やご一族の出身地である長野県でのお話を拝聴したり、現在のベロ・オリゾンテでの暮らしぶりを伺いながら時を過ごしました。
 午後3時前、私どもはT様、A様と一緒にI様宅を再び訪問致しました。すでにご親戚の方々5〜6家族がお集まりになっており、法要会場はにぎやかな雰囲気に包まれておりました。それぞれご自宅で長年お祀りされてきた古い位牌やセピア色に変色した故人の写真等をお持ちでしたので、それらも祭壇前にお祀り致しました。
 法要に先立ち、A様が司会兼通訳として今回の法要の意義や式次第、大乗教についてなどをポルトガル語でご説明下さいました。経は方便品、寿量品の二品。読経の後、前述の演台を使い、導師の杉崎法瑞先生が参集者にご挨拶されると共に、先祖供養の意義について簡潔にお説きになられ、適宜A様が通訳なさいました。先生が、

 「先祖のご供養は子孫繁栄の基なりといい、先祖が救われることが、私どもが救われることであります。それは世界中何処におりましても、私どものこの体に先祖の血が流れているということであります。(中略)仏様のことを如来(にょらい)と言うことがあります。この“如来”というのは、“いつでも来ている”という意味があります。皆さん、目を閉じてお亡くなりになった方々のお顔を思い浮かべて下さい。今そこに仏が来ております。これが如来という意味であります。自分達がご先祖のことを思う、その同じ分だけ、ご先祖は私どものことを思います」

 と静かに語られると、一尊四菩薩に対してある方は瞑目合掌し、ある方は胸に手をあて頭を垂れるなど、一同は亡き方々に思いをはせ、法要会場は厳粛な雰囲気に包まれました。ブラジル各地で離れて暮らすご一族の心が、先祖の供養を通じて再び一つになった瞬間であります。
 参集者全員での記念撮影の後、I家の中庭で食事会が催されました。各家庭がそれぞれ手作りの一品を持ち寄りにぎやかな宴となりました。ブラジルの地酒ピンガー(砂糖きびでつくった蒸留酒)を片手に、赤飯を頂きながらご一族の方々と楽しく語らいました。
 その場にはいわゆる3世、4世の方もお見えになり、肌の色や容貌も様々な方々が集っておられブラジル社会の多様性を実感致しました。ただ皆様一様に、ご一族で集って先祖法要を執り行うのは長らく途絶え、また日本から僧侶がベロ・オリゾンテ市にやってきて個人の家で法要を勤めるなどということも未だかつて無いことなので、大変感激したと仰って下さいました。その有り難い言葉によって私どもは長旅の疲れも癒え、教祖杉山辰子先生に対して、ささやかな御恩報じができたという喜びを胸に夕刻I様宅を辞去致しました。

<参集者の記念撮影>

 

<6月18日 先祖法要>

 この日はベロ・オリゾンテ市到着時より連日何かとお世話になったA様のお宅で先祖法要を執り行いました。
 午前10時頃、A様宅に到着。応接間をお借りして早速祭壇の準備に取り掛かりました。I様宅やT様宅で行った要領ですぐに掛け軸の一尊四菩薩をお祀りすることができました。
 この日はA様やT様ご家族、そしてA様のご親戚であるE様やM様ご家族など、すでに法要を通じて面識のある方々の他に、地元の日本人の方々が数家族お越しになり、全体で20名ほどの集まりになりました。私どもは初対面の方々と名刺を交換し、日本からお持ちした記念品を進呈致しました。A様は『大乗教教団史』を取り出し、大乗教についてご説明して下さいました。その後、紙塔婆によって回向中に、亡くなった方々や、健康祈願をなさりたいご家族のお名前を読み上げさせて頂く旨をご説明いたしますと、初めてお会いするご家族の方も次々とご依頼下さるので、法瑞先生と私は手分けをして塔婆書きをしました。またA様の奥様が、獣医をされておられる次女の方からのご依頼として、研究の為に犠牲になった動物や治療中に亡くなった動物の供養もなさりたいとお申し出になられるので、合わせてお引き受け致しました。
 分厚くなった回向の紙塔婆を手にすると、サン・パウロ市には日本のほとんどの宗派が支部・別院を構えているのに、其処とわずか東京〜名古屋間ほどしか離れていないベロ・オリゾンテ市にお暮らしになる日系の方々には、先祖供養の場が充分に設けられてはいないと感じました。その様な事情を鑑み、私どもが今出来ることとして、一連の法要でご縁を結ばせて頂いたご家族の先祖供養を、帰国後管長猊下に本佛殿で厳修して頂き、後日「回向証」をお送りさせて頂くことを、法瑞先生が皆様にお約束致しました(下掲写真参照)。
 11時過ぎより読経。例によって参集者一人ひとりに方便品より焼香代わりの線香を手向けて頂きました。読経の後、杉崎法瑞先生が皆様にご挨拶され、現代日本で頻発する幼児虐待等の不祥事を例に引いて、社会の乱れの根本は家庭に原因があり、開教百周年へのスローガンでもある“家庭の改革”と我々一人ひとりの“心の浄化”こそが今の世の中において最も必要なこととであるとお説きになりました。
 法要後、A様宅の中庭のプールサイドに移動し、食事会が催されました。折りしも、この6月18日は、W杯サッカーのブラジル―オーストラリア戦が午後1時より予定されていました。法要参加者もブラジルチームのユニホームを着て、この一戦に臨んでいるご様子。プールサイドには大型テレビが運び込まれており、キックオフ後は皆様試合経過に一喜一憂しながら和気藹々と楽しい時を過ごしました。結果は2−0でブラジルが勝利し、得点の直後には真っ青な空に花火の轟音がこだましたのでした。

<帰国後、管長猊下によってベロ・オリゾンテ各家の為に先祖供養がなされました>

 

 <6月19日 別れの時>

 5日間のベロ・オリゾンテ市滞在も瞬く間に過ぎ、帰路の長旅のはじまりです。帰りは、ベロ・オリゾンテから空路リオ・デ・ジャネイロへ飛び、翌日深夜のデルタ航空機にて再びアトランタを経由して成田に向うというものです。
 朝6時半ホテルをチェック・アウト。乗用車にて少し早めに空港に向いました。国道を飛ばして8時ごろ空港に着きますと、そこには既に我どもを見送るためT様父娘が待って下さっていました。間もなくご親戚のM様ご夫妻や、A様ご夫妻も次々と駆けつけて来られ、法瑞先生と私は大変感激致しました。思えば、ほんの一週間前日本を離れる時には、ベロ・オリゾンテもそこにお住まいの方々も私どもにとっては遠い異国であり、他人でありました。しかし法縁に導かれて、法要を厳修させて頂く中で、皆様とは心の通い合う友となることが出来たのです。
 空港ロビーでお互いに記念撮影をしたり、住所を交換したりするうちにいつしか出発の時間となり、私どもは皆様全員と握手を交わし出発ゲートに入りました。待合室でしばらく別れの余韻をかみしめていますと、ガラス越しに誰かがこちらを見て、何か言っています。近寄っていくと、ほんの数分前にお別れしたA様の奥様が空港ロビーと搭乗待合室を隔てるガラスをトントンと叩いて私どもに何かを話しているではありませんか。すると他の方も全員戻って来られて口々に何かを言いい、一人の方を前に押し出されました。それはT様のご親戚のE様でした。ベロ・オリゾンテ市から200キロ以上も離れた場所で農園を経営されておられるE様は出迎えの時も、15日や18日の法要の折も、そして別れの時もはるばる車を飛ばして来て下さったのです。法瑞先生と私は、ガラス越しでE様の仰っていることは聞き取れませんでしたが、言葉以上の誠意に感動し何度も頭を下げて別れを惜しんだ後、機上の人となりました。

 ブラジルの皆様どうかお元気で。日本の地より皆様のご多幸をお祈り申し上げます。願わくば一期一会のこの出会いが末永い法縁の始まりになりますように。  Obrigado.

                               合掌