「宝塔」第373号
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青年は志を持つべし

 ひところ若者の「三無主義」ということが言われました。「無気力」と「無関心」と「無責任」という傾向が指摘されました。さらにまた「無感動」が追加されて、四無主義と言われました。若さの特性の一つは「行動力」であります。全身にみなぎるエネルギーが有り余って、何かせずにはいられないという「血気盛ん」な年代であります。
 活力を失って「やる気が起きない」というのは、行動の目標が見つからず、希望の持てない状況が背後にあるのではないでしょうか。
 若さのもう一つの特性は「感性の豊かさ」です。初めて会う人、初めて見るものに対する初心の感動であります。情感の感動もあるし、知的な感動もあります。そこに精神の高揚があり、生きる喜びを知ります。
 感性の鈍磨(どんま)は、自己を卑小(ひしょう)にし、社会に対して無関心となり、生かされている自己の責任を感じないようになります。こういう傾向は、どこから生じてくるのでしょうか。小乗的な経済至上主義に汚染された社会の歪(ひず)みの現われとは言えないでしょうか。
 今日、少年の非行も問題になっています。登校拒否とか、家庭内暴力とか、悪質ないじめなど。それがもとで自殺する少年があり、或いは少年が親を殺すという衝撃的な出来事があり、さらにまた、学校内でいじめが高じて殺害に至るという惨(むご)たらしい事件も起きています。人の命を軽視する無慈悲と残忍な衝動性は、どこから生じてくるのでしょうか。
 
 学生時代は知的欲求も旺盛で、思考力の育つ時でありますが、その彼等がいま定期的に購読している雑誌の上位五位までは、漫画雑誌と写真雑誌だそうであります。いわゆる活字離れが甚だしくなっているのです。
 活字離れは、ものを考える力、理解力、判断力を鈍らせていきます。良き書物に接することによって、世相を知り、人生を知り、思想と歴史を学び、優れた人々の智慧や感性に学ぶことができます。それは自己の人生を創造し、成長させていく大切な力となるものであります。
 自由主義社会の急所は、「自ら選択する能力」を持つことです。「赤信号みんなで渡れば怖くない」という依存的な精神は、無思考、無定見、無責任な自己をつくってしまいます。「出来るだけ楽をしよう」などという考え方では、人生のうま味にふれることは出来ません。
 青年は自我の確立期で、第二の誕生ともいわれます。社会に対する疑問に直面し、自らの生き方を模索し、誠実に人生に対処していくためには、陣痛の悩みを嫌ってはならないのです。「自ら生きる」という主体性が確立されなければなりません。
 釈尊は仰せられました。
  「他を拠り所とするなかれ 自らを拠り所とせよ」
 と。自らを拠り所として、その自己を深く掘り下げていく時、迷妄(めいもう)の表層を破って、内奥の仏性を見出すことが出来るのであります。自己の仏性に目覚めることは、人生最高の因縁であります。これによって雨にも負けず風にも負けない、豊かにして堂々たる人生の大道が開けていくのであります。
 
 濁悪への抵抗力
 「生むは易く、育てるは難し」と言います。「ああしてはいけない」「こうしてはいけない」と束縛し過ぎてもいけないでしょう。また甘やかし過ぎても、良くないでしょう。
 とかく心配の度が過ぎて、過保護になりやすい親が多いようです。ちょっと寒いと「風邪をひかないように」と厚着をさせる。「危ないから外へ出てはいけない」とか、「転んで怪我をするといけないから、走ってはいけない」とか、「指を切るといけないから、ナイフで鉛筆を削らないように」とか。
 あまり大事にし過ぎますと、子供の活力が弱まってしまいます。寒さに対しても、危険に対しても、生命にはもともと自衛力、抵抗力が備わっています。長時間立っている力、座る力、歩く力。或いは考える力、辛抱する力。これらは訓練によって強くなります。病気とか病原菌を恐れているよりも、生命自体の抵抗力を強くしていくことが大切です。信仰の力によって自然治癒力が強化されることは、既に明らかなことであります。
 また肉体的な自衛力だけでなく、精神的自衛力を養うことが大切です。世の中には、悪いこと、醜いこと、正しくないことがいくらでもあります。人はこの中で生きていくのであって、逃げる所はありません。大切なことは、これらの醜悪に負けない抵抗力をしっかりと持つことであります。
 善良な中学生が悪友に誘われて、万引きの手助けをして補導されたということがあります。家庭の主婦が、目先の不愉快なことや悩みを堪えることが出来ないで、飲酒に溺れ、或いは麻薬に手を染めて中毒症状に堕ちている人もあります。
 善を行う努力が大切なように、悪に対する抵抗力を養うことも大事なことであります。濁悪の世の中にあって、濁悪に染まらない力は、大乗の仏法によって得られるのであります。
 「蓮華の水に在るが如し」
と経典に説かれています。
 釈尊は、常に「心を調えよ」と教えられています。これは精神の抵抗力を強くすることです。
 衝動的に瞋恚(しんに)の心を発したり、或いは貪欲(とんよく)に走り、不平不満の思いに捕らわれることのないよう、罪に引き込まれない力を保持することであります。
 「心に従わず 心の主になれ」
と経典には示されています。
 煩悩に動かされやすい私どもは、常に妙法を受持して罪障を造らぬように努めねばなりません。また既に造った罪障は、妙法によって消滅していかねばなりません。
 
 或るお母さんは、我が子の反抗に会って、大そう苦悩されました。
 「うちの子は素直な、優しい子で、中学生の頃は勉強もよくするし、成績も良いほうでしたが、高校に入ってから、だんだん勉強を怠るようになり、学校も休むようになりました。
 はじめは身体の調子が悪いからとか、今日は頭が重いとか、風邪を引いたとか、気分が悪いからとか、いろいろな口実をつくって休んでばかりいました。
 朝、いつまでも寝ていて、いくら叱っても起きようとはしません。そのくせ夜中遅くまで、音楽をかけたりして遊んでいるのです。くどくど言うと、目をむいて怒ります。時には『おれはもうだめだ』などと言うのです。この先どうなるかと心配で、日夜心を傷めています」
 不登校を続ける子には、その子なりの悩みもありますが、その陰には母親自身の罪障が動いているのです。そのことを指摘しますと、お母さんは夫の両親と仲が悪く、世話をするのを嫌い、病気の時も面倒を見てやらず、親を怒らせ、泣かしてきていました。教えを聞いてこのお母さんは懺悔し、救われることができました。
 働くことも、お金儲けも大事ですが、それ以上に大切なことは、自分のわがままから他を泣かしたり、苦しめたりすることのないように、法によってよく心を調えることであります。親の徳行は、必ず子の人生に良い影響を与えることは疑いないことであります。 

                            合 掌

宝塔第373号(平成23年2月1日発行)